不定詞の基本形
完了形の不定詞
たとえば関東に住んでいる A さんが、旅行で初めて関東に訪れたという B さんと会話をして、B さんの訛りから、
(あ、この人は関西に住んでいるらしい。)
と思ったとします。その心の声を英語で表すと、
It seems that he lives in the Kansai area.
などと言えます。これは It seems that S' + V' の構文を使っていますが、この構文は、S' seem(s) to という不定詞の形でも言い換えられますから、同じ内容を、
He seems to live in the Kansai area.
とも言えます。
このところで、もし A さんの会話の相手が、その時初めて関東に来た旅行者ではなく、同じ会社の同僚で、何かとつきあいのある関西弁を話す C さんだとしたら、A さんの C さんに対する印象を表す心の声としてこういうセリフが考えられます。
(どうもこの人は関西に住んでいたらしい。)
これを、さきほどのように It seems that S' + V'で表すと、
It seems that he lived in the Kansai area.
となります。ではこの文を S' seem(s) to で言い換えるとどうなるでしょうか。
「らしい」は現在ですが、「住んでいた」のは過去なので、
He seems to live in the Kansai area.
では表せません。なぜならそれだと、さきほどの文と同じになるからです。では「住んでいた」のが過去だから、
He seems to lived in the Kansai area.
となるかというと、これもダメです。不定詞は原形をとらなければならないからです。
困りました。
ではどうするのか、という解決策として用いられるのが「完了形の不定詞」です。
He seems to have lived in the Kansai area.
この文における完了形には完了形本来の意味である、「完了・結果・経験・継続」の意味はありません。
単に、seems という現在形の時間よりも時間が古い、「過去」であるということをあらわすのみです。