経験受動態

 受動態の基本公式は、「be + 過去分詞」でしたが、その公式とは違う形で、「〜される」という意味を含む重要な形がありますので、ここで紹介しておきます。
 それは「経験受動態」と呼ばれるもので、形は、

S + have [または get] + O + 過去分詞 + ( by -- )

となります。
 この表現は、主語自体が何かをされるのではなく、「主語の持っている何か」が何かをされる場合(ややこしいですが)に使います。
 たとえば、
 
  (私は2匹の亀を誰かに盗まれた。 )
 
 という日本語があるとしましょう。「盗まれた」のですから受け身なのですが、文の主語は「私」で、盗まれたものは「2匹の亀」です。
 私自身が「〜された」のではなく、私の所有物である2匹の亀が「〜された」となっています。
 こういう場合に、経験受動態の公式を用います。
 
  I had my two turtles stolen by someone.
 
で、できあがりです。had は got になっても同じです。
 had という語と stolen という語が一文で使われていますが、過去完了と混同してはいけません。この用法は have (や get ) の中の非常に重要な用法の一つなのです。have にはいろんな使い方があるが、経験受動態の用法もあるのだ、としっかり認識することが大切です。
 また、この文を、単純に「私の2匹の亀」を主語にして普通の受動態でも表すことももちろんできます。
 
  My two turtles were stolen by someone.
 
また、文全体の意味を表現するだけだったら、能動態で、
 
  Someone stole my two turtles.
 
 とも言えます。
 ついでに、付け加えておきたいことがここで一つあって、この文を次のようには言えません。
 
  (×) Someone stole me my two turtles. (×)
 
 なぜ言えないか。それは、この間違った文では、steal を S + V + O + O の4文型にして使ってしまっているからです。steal に4文型の使い方はありません。
 日本語訳からだけだと、いかにも成立しそうな文なのでよく大学入試で問われる問題です。

 

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